そういえば心臓移植見学ってどうだったんよ【34日目】

到着したのが実習開始前の土曜日だったので、昨日で無事5週間を迎えたことになりました。大学の同期が帰ってからは寂しくなるかと思っていましたが、2週間前に日本人会で知り合った市内の違う大学に長期留学に来ている顔の広い子と急激に仲良くなり、色々連れ回してもらっています。新しい出会いに感謝。たまひよです。

今日もその子に色々買い物や食事に連れていってもらったのですが、おそらく明日も(誰とかは決めていませんが)そんな調子になるのでまとめることにして、記事にはこの間見学した心臓・肺移植の感想を書き残しておこうかと思います。

見学に至った経緯

今回の自分のローテーションは内科系で移植とは全然関係なかったのですが、移植外科に勤めている日本人の先生がいらっしゃったことでこのような機会をいただくことができました。

その日は送別会ということで現地の日本人学生たちと集まってパーティーをしていました。そこで心外志望でその先生と連絡を取っていた友人から「明日未明にあるらしい」という話が浮上。当然ですが、移植は突然にやってきます。

おそらく今後二度と見ることのないオペでしたし、アメリカと言えばというイメージもあったのでお願いして一緒に見させてもらうことにしました。

急いで飲酒を止めて、部屋に帰って睡眠を取って現地へ。と言ってもまあ、起きられなかったらやばいという緊張で全然眠れなかったんですけどね(笑)

ドナーの眠る移植センターへ

私がこちらに渡ってきてからの一番の「さすがアメリカ規模が違え」ポイントが、この「市内にドナーからの臓器移植専門の医療施設がある」ということでした。

残念ながら脳死になってしまい臓器提供をすることになった患者さんは、全米の移植を管理しているUnited Network for Organ Sharing (UNOS)の支部であるOrgan Procurement Organization (OPO, 全米に58ある)に移動され、各臓器の評価およびUNOSと連携してのレシピエントの選定が行われます。

そして患者さんからの臓器摘出手術はそのままこの移植センターで行われます。今回は市内のセンターだったので救急車で行きましたが、友人はジェット機で隣の州まで飛ぶという経験もさせてもらっていたようです。

(もちろん現場では写真を撮っていないので、移植関連の写真は救急車だけです笑)

座席のシートベルトが6点式でびっくりしました(画像はイメージ図)。確かに道路もボコボコしているしスピード出すしで、危ないかも・・・。ちなみに、救急車が横転して骨盤骨折してしまった移植外科医の先生も本当にいらっしゃるそうです(苦笑)

ドナー手術

現場に到着するとセンターの医師や看護師のチームが開胸・開腹を行っていました。集まってきたレシピエントの病院の医師たちが心臓→肺→消化器系→腎と順に取り出していきます。

全体を通して「随分淡々と進むな」というのが正直な印象でした。

今回の記事を書くに当たっては日本の色々なサイトを参考にしているのですが、それらのサイトに登場するような厳重な身分確認や

↑のようなシールでの細かい管理、ミーティングなどは一切なく、

来る→着替える→取り出す→着替える→帰る

という行程が流れるように行われました。

連れて行ってくれた先生は移植センターのスタッフの方々と顔見知りで、既にお互いのやり方も理解しあっている様子でした。件数も多く洗練されているからこそ、このすごい技術が「淡々と」しているように見えたのでしょう。

日本の死体臓器提供の最後の行程が記者会見なのとは大違いです。

そんな淡々としている中でも、速くてダイナミックな移植手術の手技には驚嘆するばかりでした。癌のリンパ節郭清の時のように細かいことを気にする必要がなく、大きく切り取ってしまえばいいという手術の性質とも関係していると思いますが、非常にスピーディーでした。

病院へ帰還そしてレシピエント手術

先述した救急車でぶっ飛ばして病院に帰ると、すぐにレシピエント手術が行われました(というか到着した時にはもう始まっていました)。巨大な体外循環装置から血液を供給されている状態の患者さんにドナーの心臓が入れられ、私でも名前を知っているような主要な血管が繋がれていきました。

こちらでは手術の手技を見ることに加えて、患者さんの元の心臓を触って勉強する機会をいただきました。生きていたことを実感させられる温もりの中で、部屋や弁の位置関係や構造の正しいイメージを頭に植え付けることができました。

レシピエント手術で一番感動的だったのは間違いなく、モニターに表示される血圧が、体外循環で一定に保たれていた状態からドナーの心臓の拍動とともに上下する状態に変わった瞬間でしょう。ドナー手術で心臓が摘出された後すぐにモニターが消されたのを見た時には悲しい気持ちになりましたが、新しい持ち主の元で働き始めたところを見ることができて本当に感動しました。

日米の手術の違い?

日本でも自分の大学病院、こちらでもドナー手術とレシピエント手術しか経験していませんが、いくつか違いを感じたので書き残しておきます。

1つ目が、手術室にいる手持ち無沙汰なスタッフの少なさです。見学したのがフェロー以上の医師しか関わらない手術だったからということもあると思いますが、日本の大学病院では必ずと言っていいほと居た、「見習いの手洗いをして見ているだけの若手医師」的な存在が少なかったことに驚きました。

Med Studentでも手術に参加すればかなり色々やらせてもらえるということだったので、General SurgeryのResidency中はわかりませんが、実際ただの傍観者という機会は少ないのでしょう。もしResidency中はそうなのだとしても、その期間は5年で終わるとはっきりわかっていますからね。プログラムの期間や到達目標がはっきりしているのも、アメリカの医学教育の大事な長所だと思います。

2つ目が、クローズドループコミュニケーションがしっかり徹底されていたことです。

大阪大学医学部附属病院資料より引用

クローズドループコミュニケーションは緊張状態で集中している現場などにおいて、自分の声かけが相手の耳に届き、正しく理解されていることを確認するための明確で簡潔なコミュニケーションテクニックのことです。

人の声が耳に入らない場合や相手の言っていることが理解できないことが多々あるという前提で、

  • 躊躇わずに勇気を持って声を出すこと
  • 返事がなかった場合は無視されたと気分を害するのではなく耳に入らなかった或いは理解できなかったのだと考えること
  • 聞いた人は理解したことを伝え、勘違いがないか確認すること

を重要視しています。私がこの言葉を初めて知ったのはAHA協会のACLSコースを受けた時だったのですが、そこでも救命のキモとして扱われていたのを記憶しています。

実際に手術室では器具の受け渡しや体外循環装置の設定などにおいて、非常に細かく指示出しー復唱、質問ー確認の返事が行われているのを見ることができました。

手先は日本人の方が器用だと思いましたが(笑)、やはり見習うべきところは多そうでした。

最後に

今回心臓の移植という究極の手術の現場に立ち会うことができ、その機会を利用してたくさん学ばせていただくことができました。

特にクローズドループコミュニケーションは今後もしっかり活用して正しく人と意思疎通を図れるようにしていきたいと思います。

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