細分化された専門医療の光と影【32日目+α】

他の人と比べて長居している分帰国がかなり遅いので、ぼちぼち報告書でもまとめていかないとなあと思いながら1個上の先輩が書いたものを読んでいたら、思っていたよりも色々なことをやらせてもらっていたようで衝撃的でした。前を向いて懸命に生き始めたつもりですが、今までの生き方に反省が尽きません。たまひよです。

さて、サブスぺ科での実習も4日目になりました。徐々に大きな流れが掴めてきたので、「細分化された専門医療の光と影」と題して、ラスボス的な難しい話題について自分なりに考察しておきます。

※この記事は5週4日に書き始めましたが、書き上げるのに困難を極め、書き上がりは留学後になりました。これ以降は全ての知見を含む内容になっています。ご了承ください。

これまでの記事でも書いてきましたが、アメリカの医療はかなり細分化されており、多くの専門職から成り立っています。

例えば分かりやすいところでは、医師がルートを取ったり採血をしたりすることはなく、Registered Nurse (普通の看護師資格の方)が出来なかったとしてもカバーするのは採血専門のナース(そんなのいるんだ)ですし、外科医は術前術後管理を行いません。

科という面で見ても、日本だったら「血液内科」が全てカバーしていそうなところを、白血病などの治療を担当するHeme-Onc (腫瘍科の血液部門)、骨髄穿刺・生検をしたり検体を覗いたりするHeme-Path (病理科の血液部門)、造血幹細胞や骨髄移植を担当するBMT、私のいたBenign-Hemeなど沢山のチームに細分化して行っていました。

(もちろん骨髄検体を覗くのは日本でも病理科だと思うのですが、そもそも血液腫瘍の病理だけを専門にやるほど病理医いないですよね笑)

6週間の実習で間近に見る中で思ったことがいくつもあったので、良い点悪い点形式でまとめておこうと思います。

良い点

難しい患者の問題を解決できる可能性が高い

何といっても最大の理由はこれでしょう。1人の患者に多くのチームがコンサルなどの形で関わり、自分たちの立場から診ていくシステムでは、1人の医師では診断や治療方針の決定が難しい患者に対して有効なアプローチをできる可能性が高いです。実際にも、例えばICUでなかなか意識が戻らない患者に対して、多くのチームが全力を尽くしている様子も目にしました。

多様性を重視するのは全ての面において重要だと思います。

そもそもアメリカ自体が「人種のるつぼ」と呼ばれるような多種多様な民族が集まる国として有名ですが、大学や病院も人種や出身地、性別などのバックグラウンドがなるべく様々になるように人をリクルートしている雰囲気を感じました。また、マッチング先を選んでいた学生たちの中にもそういう点を重視している人がいることにも気づきました。

多くの人の意見を取り入れる、それぞれの強みを生かすことの良さや大切さを改めて感じました。

全員にはっきりした役割がある

2つ目の良い点としては、全員にはっきりした役割があり、それぞれが自分の役割にプライドを持って取り組んでいることを挙げたいと思います。

「これは誰がやるんだろう」と思った仕事でも、研修医や担当看護師に聞けば最終的には「ここしかない」という部門や担当者の名前まで判明した印象があります(笑)

このようにはっきりした役割があることは、まず業務の効率化という意味で非常に大切です。Benign-Hemeで患者のお決まりのパターン(鎌状赤血球症の急性増悪に対する鎮痛や輸血)への対応をせっせと行うNurse Practitionerを見て、すごいと思ったものです。

それぞれが自分の役割にプライドを持って取り組んでいる点も非常に重要です。仕事の満足度に影響する要因として「与えられている役割」があるなんていう話が騒がれていますが、スタッフが多くて過労になっていないことと併せて、このプライドがあるというのはスタッフが皆イキイキとしている大きな理由の1つなのではないかと思いました。

日本では医師がどうしてもリーダーになりがちで、「この手技は看護師が失敗したら責任が取れないから医師がやることになっている」みたいなツイートを見たことがあります。

でも普通に考えて、同じ医療の専門家で、看護師に取れなくて医師に取れる責任って何なんでしょうね?この辺は患者さんの意識の問題もあり、改善が必要な領域だと思います。制度上の権限委譲もそうですが、全ての医療者・患者の意識改革も含めて考えなくてはなりません。

悪い点

責任の所在が不明瞭になる

総合内科にいた頃にはそれぞれの患者に対して毎日大量のコンサルを行っていたのですが、中には本当に内科的な全身管理を既に必要としていない患者もいて、毎日コンサルと結果を受けてのカルテ執筆だけを行わなくてはいけない状況でした。

責任と病室の都合だと思うのですが、誰がどう見ても無意味でしょう。

そうでなくても毎日多くの医療者が病室を訪れるため、患者にはどの人に何を伝えればいいのか分かりにくいのに、裏では更にひどい状況になっているというのは、あまり知られたくはないですね(笑)

多くの領域が存在する分、グレーゾーンも多く、その狭間で割りを食っている人がいるんだろうという悪い点は見えました。

退院等の遅延につながる

致命的な救急の現場では素早く判断が行われていたのですが、入院中の患者さんでは、多くの人が関わることで様々な新しい律速段階が生まれているのを感じました。

人が増えるごとに判断が増え、確認までのタイムラグがあり、今どこで詰まっているのか、何を待っているのかも分からないこともありました。

日本より圧倒的に患者の入院期間の短いアメリカに対して言うのも憚られますが、まだまだ短くできる人は沢山いるなという印象でした。

代替可能性が高い

厳密には医療全体としては悪い点ではないかもしれませんし、さっき良い点として書いた「全員にはっきりとした役割がある」というのとも一見矛盾していそうですが、この「代替可能性が高い」というのを挙げてみました。

全体として細分化されていて、ガイドラインもしっかり定められており、高度な素晴らしい医療が行われているのを感じました。

しかし、今後どこで教育を受けるかということを考えるた時に、極論を言えばUpToDateを引いて、分からなくなったらコンサルするだけで総合内科はできてしまうのではないかという印象を受けました。

ガイドラインやUpToDateをうまく使いこなせるようになったAIに代替されずに生き残るためには、患者の細かい希望を汲み取り、1人の患者全体を診る能力が必要になると思います。そういったことに気を使う必要性がある、教育を受けられるという点では日本の方が良い環境なのではないかと考えました。

お金がかかる

はい、これはもう、説明不要だと思います。笑

まとめ

もちろん高度な医療が行われることが一番なのですが、細分化すればその分お金はかかりますし、自分だけの強みを持つのは難しいのかもしれません。

医療資源の集約化が叫ばれて久しい日本ですが、試行錯誤しながら、国の特性にあった、良い形に辿り着きたいものですね。

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