話題本だけあった新井紀子著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」

このブログでの8月の目標の1つである、「原点であるモチベーションノート・忘備録としての使い方を取り戻す」を達成すべく、久々に一般書籍の感想記事です。

今回は2月に発売され大きな話題となった、東大にチャレンジする受験ロボット「東ロボくん」プロジェクトのディレクターを務める国立情報学研究所の新井紀子教授によって書かれた、「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」です。

実際に日本のAI研究の第一人者としてその可能性と限界を知り、更に研究の中で日本の子どもたちの教育水準が悲惨な状況になっていることに気づいてしまった著者が予想する未来とは、そしてそれに向けて我々ができることとは。

内容は、東ロボくんの研究から分かったことを中心に組み立てられた前半部分と、筆者が中心になって行っている中高生を対象とした読解力テスト(リーディングスキルテスト)についてからなる後半部分で盛りだくさんでした。

AIが東大に到達する日は来るのか

AIが東大に合格することができるのか、シンギュラリティが到来することはあるのかが、前半部分の大きなテーマでした。帯にも散々煽り気味に書かれているように、その瞬間は訪れない、というのが筆者の考えです。

これは東ロボくんプロジェクトのメンバー集めをしている頃から、専門家には分かりきっていたことだったようです。では、なぜこのプロジェクトが行われたのか?

それは、「AIの実像を正確に示した上で、AIと共存することになるこれからの社会にどのように備えていく必要があるか、さまざまな立場にある人が考える材料を提供する」ためだったようです。

500億円もの国家予算をつぎ込んで作り上げようとしたものの、完全な失敗に終わった第五世代コンピューター。その失敗の原因を分析した資料は全くと言っていい程存在しないようです。失敗から目を背け学ぼうとしない日本の姿勢が、GoogleやIBM Watsonを中心に統計的手法で着実にAI技術を進歩させているアメリカとの差であり、こういった姿勢はいけないという筆者の思いも、プロジェクトの実施に踏み切ったきっかけなのかもしれません。

「失敗」は論文に掲載されることはありません。ニュースで取り上げられることもありません。取り上げられるのは、ディープラーニングがうまくいったときだけです。でも、あなたの会社にとって有用なのは成功の情報だけでしょうか。どれだけ投資してもディープラーニングはうまくいかない、という情報こそが今まさに喉から手が出るほど必要なのではありませんか。東ロボはあなたの代わりに、身を切ってそれを証明して公開したのです。(P.105より)

書籍中では用いた手法や寄せられた反響、筆者の思いなどが詳細に語られています。

リーディングスキルテストで明らかになったのは子どもの読解力低下だけなのか?

アミラーゼという酵素はグルコースがつながってできたデンプンを分解するが、同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

セルロースは( )と形が違う。

①デンプン ②アミラーゼ ③グルコース ④酵素

一時期ネットで話題になったこの問題。見たことがある方も多いのではないでしょうか。これが、筆者が東ロボくんプロジェクトでの知見を元に作り上げたリーディングスキルテストの例題です。

話題になった当時、「問題に悪意がある」「文章が下手」という批判も多くあった印象ですが、これについては

  • 題材には中学校と高等学校の教科書、新聞の科学面や小中学生向きの記事を用いているため、これらに悪文があったとしても、それが理解できないことは不利益を生む
  • 受験者の能力値を結果から6段階に分け、能力が高いほど正答率が高い問題を適切問題とする

という対策が取られているようです。確かに抜け目ないです。

このテストを受けた高校の平均能力値と、受験での実際の偏差値との間には0.8という高い相関があることからも、基礎的読解力があることは人生を左右するほど重要な要素だということが伺える、というのが筆者の主張でした。

ここまでについてはもっともだと思います。しかし私は、読解力が低いのは子どもだけなのか?という疑問を抱きました。

ちなみに先ほどの問題の答えは①デンプンなのですが、書中には「某新聞社の論説委員から経産省の官僚まで、なぜかグルコースを選ぶので驚きました」とありました。問題が悪いと批判していた人たちの中には、間違えて腹を立てている人もいることでしょう。

意味ないと分かっていながらもついつい目に入ると追ってしまうTwitterでの不毛な議論の数々も、元を辿れば読解力・理解力が低いことに起因しているのかもしれません。

Twitterで専門家に食ってかかって言い争っている気になっている生産性の低い人たちはどうでもいいとしても、教える側も正しく教えることができているのか甚だ疑問です。

こんな駄文ばかりいつもブログに書いている分際でケチつけるのも悪い気はしますが、確かに読解力テストの問題になっている文章の中には、「教科書なんだからもっとうまい表現で書けたんじゃないの?」というものがいくつか見られました。

また、生徒にどう教育して状況を改善するか考えるために実際にテストを解いた先生たちの中から、「教科書の文章を読むことがこんなに難しいこととは思いませんでした」という感想が出てきたことにも驚きでした。

①幕府は、1639年、ポルトガル人を追放し、大名には沿岸の警備を命じた。

②1639年、ポルトガル人は追放され、幕府は大名から沿岸の警備を命じられた。

2つの文が表す内容は同じか。

この問題の中学生正答率が57%だったことに対して、

とある新聞社の記者が、「57%の正答率ではダメですか?100点満点で57点ということは、平均点としては悪くないのではないですか?」と聞いたのです。

同義文判定の問題は2択ですから、中学生の正答率はほぼコイン投げ並みだということです。それが「深刻なのかどうか」を自ら判断できないような記者が新聞記事を書いていることに慄然とせざるを得ませんでした。

これほどまでに統計や確率の素養がなければ、ディープラーニングの仕組みや限界を理解できようはずがありません。トレンドだけを追いかけ、うっかり「シンギュラリティ押し」の記事を書いてしまうのもうなずけます。(P.206 一部省略)

という記述があったことなどからも、読解力・理解力・論理的思考力が低下しているのは子どもたちだけではないと感じました。

まあ、実際に筆者もそれを感じていながら、大人を刺激せず、子どもへの教育を高めるという体で皆を成長させようと考えているのかもしれないですけどね。そうだとしたら、相当上手い。

AI世界恐慌がやってくる最悪のシナリオ

結果として東大に合格はできないものの、東ロボくんは偏差値57に到達。大学受験に取り組む高校生の中で上位20%のポジションになりました。

単純に考えれば東ロボくんに負けた80%の人は将来ホワイトカラーの職で居場所がない、ということになります。そのまま突き進めば利潤がどんどん減り競争力は落ちるけれども、別のことができるかといえばそうでもない。失業者は増え、残った人たちも稼げなくなり、恐慌へ。

ゾッとする未来が訪れるのでしょうか。これを回避する手段とは。詳しくは書中で、笑

素直に自分の子どもの教育について考えてみたりした

ゾッとする未来についても色々思うところはありますが一旦目を背けて。

以前にこんなツイートをしました。

人生の中で親にとても感謝していることの一つが、中学受験をさせてもらったことです。そして、可能ならば自分の子どもにも同じような教育経験を積ませたいと思っています。このツイートはこの本を読む前にした物だったのですが、読んでいるとそう思った理由に納得できました。

有名私立中高一貫校では12歳の段階で、公立進学校の高校3年生程度の読解能力値がある生徒を入試でふるいにかけていること。そのような入試をパスできる能力があれば、教科書や問題集を「読めばわかる」のだから、高校2年生まで部活に明け暮れても、1年間受験勉強に勤しめば旧帝大クラスに入学できてしまうこと。

小5で受験勉強を始めた頃は国語の偏差値が50を切っていましたからね笑

何とかしてもらえて良かったですw

ちなみにこの読解力を伸ばす具体的な手法については、今のところほとんど何もわかっていないとのこと。読書量や学習習慣との関係もないとなると、簡単に測定できる指標ではなさそうです。

どれだけ色々なことを考えて両親や先生と議論したか、文が読めているかフィードバックを受けたか(問題文の読み間違えで失点した経験等)などが関係ありそうですけど、測定は・・・笑

今後の新井先生の研究での進捗に期待しつつ、自分が受けた教育を忘れないうちに分析しつつ、まずは結婚相手を見つける努力をしていこうと思います(結局そこかい)

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『話題本だけあった新井紀子著「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」』へのコメント

  1. 名前:Wonder 投稿日:2018/08/09(木) 10:00:49 ID:855f59984 返信

    こんにちは

    毎日、頑張ってる
    たまごのひよこさんには

    ほんとう、すごいと思います!
    リスペクトしますね

    ポチッ☆

    • 名前:たまごのひよこ 投稿日:2018/08/10(金) 18:05:12 ID:7cbb856c3 返信

      色々手を出していますからね、、、
      そろそろ目に見える成果が欲しいところです。
      頑張ります。